ここでは、定義に従った微分から始まり、べき関数の微分の拡張、及び合成関数の微分公式を作っていきます。
※スマホの場合、横向きを推奨
定義に従った微分
有理数乗の微分の公式
上の微分の公式を導くのがこの記事の目標です。
見た目以上に難しいので、順を追って説明していきます。まずは定義に従った微分から練習しましょう。
導関数は、下のような「平均変化率の極限」によって定義されます。
$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$
この定義式を基にして、まずは具体的に微分計算をしてみることにします。
練習問題1
定義に従って $f(x)=\dfrac{1}{x}$ の導関数を求めよ。
定義通りに計算してみてください。
まだ $\left(x^{p}\right)’=px^{p-1}$ の公式は使ったらダメですよ。
これはできそうです!
まずは定義式にそのまま入れて…
$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\frac{1}{x+h}-\frac{1}{x}}{h}$
$\, =\underset{h→0}{\lim}\dfrac{x-(x+h)}{h\left(x+h\right)x}$
$\, =\underset{h→0}{\lim}\dfrac{-1}{\left(x+h\right)x}$
$$f'(x)=-\dfrac{1}{x^{2}}$$
練習問題2
定義に従って $f(x)=\sqrt{x}$ の導関数を求めよ。
定義式の通り式を立てると…
$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\sqrt{x+h}-\sqrt{x}}{h}$
よくある分子の有理化ですね。分母分子に $\left(\sqrt{x+h}+\sqrt{x}\right)$ をかけて有理化…
$\, =\underset{h→0}{\lim}\dfrac{1}{h}・\dfrac{x+h-x}{\sqrt{x+h}+\sqrt{x}}$
$\, =\underset{h→0}{\lim}\dfrac{1}{\sqrt{x+h}+\sqrt{x}}$
$\, =\dfrac{1}{\sqrt{x}+\sqrt{x}}$
$$f'(x)=\dfrac{1}{2\sqrt{x}}$$
練習問題3
定義に従って $f(x)=\sqrt[3]{x}$ の導関数を求めよ。
$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\sqrt[3]{x+h}-\sqrt[3]{x}}{h}$
この分子の有理化をするので、分母分子に…
あれ、何をかけたらいいんでしょう…?
さっきは根号をなくすために展開公式 $(a-b)(a+b)=a^{2}-b^{2}$ を使ったわけですね。
今回は3乗根なので、使うべき公式は…
あっ、$(a-b)(a^{2}+ab+b^{2})=a^{3}-b^{3}$ ですね!
$\sqrt[3]{x+h}-\sqrt[3]{x}$ を $a-b$ と見ることになるから…
$=\left(\sqrt[3]{x+h}\right)^{3}-\left(\sqrt[3]{x}\right)^{3}$
なんかグッチャリしてるけど、こういうことですね!
分母分子に $\left(\sqrt[3]{x+h}\right)^{2}+\sqrt[3]{x+h}\sqrt[3]{x}+\left(\sqrt[3]{x}\right)^{2}$ をかけると…
$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\left(\sqrt[3]{x+h}\right)^{3}-\left(\sqrt[3]{x}\right)^{3}}{h\left\{ \left(\sqrt[3]{x+h}\right)^{2}+\sqrt[3]{x+h}\sqrt[3]{x}+\left(\sqrt[3]{x}\right)^{2}\right\} }$
$\, =\underset{h→0}{\lim}\dfrac{1}{\left(\sqrt[3]{x+h}\right)^{2}+\sqrt[3]{x+h}\sqrt[3]{x}+\left(\sqrt[3]{x}\right)^{2}}$
$\, =\dfrac{1}{\left(\sqrt[3]{x}\right)^{2}+\sqrt[3]{x}\sqrt[3]{x}+\left(\sqrt[3]{x}\right)^{2}}$
$\, =\dfrac{1}{\sqrt[3]{x^2}+\sqrt[3]{x^2}+\sqrt[3]{x^2}}$
$$f'(x)=\dfrac{1}{3\sqrt[3]{x^{2}}}$$
$\left(x^{-1}\right)’=-1・x^{-2}$ $\left(-1・x^{-1-1}\right)$
$\left(x^{\frac{1}{2}}\right)’=\dfrac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}$ $\left(\dfrac{1}{2}x^{\frac{1}{2}-1}\right)$
$\left(x^{\frac{1}{3}}\right)’=\dfrac{1}{3}x^{-\frac{2}{3}}$ $\left(\dfrac{1}{3}x^{\frac{1}{3}-1}\right)$
となって、
$\left(x^{p}\right)’=px^{p-1}$($p$ は有理数)
が成立していそうですね。
合成関数の微分
$\left(x^{p}\right)’=px^{p-1}$($p$ は有理数)
を証明するための最大の道具、合成関数の微分の公式を作ります。
まずは $\left(x^{p}\right)’=px^{p-1}$ を証明することを忘れて、合成関数の微分の方法を考えましょう。
$\left(x^{2}+1\right)^{4}$ を微分せよ。
$\left(x^{2}+1\right)^{4}$ は、$f(x)=x^{4}$ の中に $g(x)=x^{2}+1$ が入った合成関数 $f\left(g(x)\right)$ の形をしています。
この $\left\{ f\left(g(x)\right)\right\}’$ の形のままで微分する公式を作りましょう。
$\left\{ f\left(g(x)\right)\right\}’=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f\left(g(x+h)\right)-f\left(g(x)\right)}{h}$
分母が単純なのにくらべて分子は非常に複雑な形をしていて、大きなギャップがあります。そこで、仲介をしてくれる存在を挟み込むことにします。
分母分子に $g(x+h)-g(x)$ をかけてみると、ちょうど分母と分子のギャップを埋めることが出来ます。
$\left\{ f\left(g(x)\right)\right\}’=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f\left(g(x+h)\right)-f\left(g(x)\right)}{g(x+h)-g(x)}・\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}$
まず、極限の中の後半部分をみて、
$\underset{h→0}{\lim}\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}=g'(x)$
であることには気が付きますか?
さらに、前半部
$\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f\left(g(x+h)\right)-f\left(g(x)\right)}{g(x+h)-g(x)}$
も実は定義式ほぼそのままなんです。
微分の定義式はもう一つ、
$\underset{b→a}{\lim}\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(a)$
この形もありましたね。
あっ、その形もありました!ということは
$g(x+h)$ を $b$、$g(x)$ を $a$ とみて…こうです!
$\underset{g(x+h)→g(x)}{\lim}\dfrac{f\left(g(x+h)\right)-f\left(g(x)\right)}{g(x+h)-g(x)}=f'(g(x))$
$\left\{ f\left(g(x)\right)\right\}’=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f\left(g(x+h)\right)-f\left(g(x)\right)}{g(x+h)-g(x)}・\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}$
$\hspace{48pt}=f'(g(x))・g'(x)$
$$\left\{ f\left(g(x)\right)\right\}’=f'(g(x))・g'(x)$$
$\left(x^{2}+1\right)^{4}$ を微分せよ。
解答
$f(x)=x^{4}$,$g(x)=x^{2}+1$ として公式を使うと
$\left\{ \left(x^{2}+1\right)^{4}\right\}$ $=4\left(x^{2}+1\right)^{3}\left(x^{2}+1\right)’$
$\hspace{57pt}=8x\left(x^{2}+1\right)^{3}$
$x^{2}+1$ を一つの文字の『カタマリ』とみなして微分すると $4\left(x^{2}+1\right)^{3}$、そこに『カタマリの微分』 $\left(x^{2}+1\right)’$ すなわち $2x$ をかけています。
なお、文字のカタマリに $u$ という名前をつけ、
$y=f(u)$,$u=g(x)$,$f'(u)=\dfrac{dy}{du}$,$g'(x)=\dfrac{du}{dx}$
と書き換えれば、この式は
$$\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{dy}{du}・\dfrac{du}{dx}$$
と書くこともできます。直感的にはこちらの表記の方が解りやすく、よく使用されます(分数の約分と同じ形になっていて憶えやすいです)。
$x^{n}$ の微分の拡張
$\left(x^{p}\right)’=px^{p-1}$($p$ は有理数)を示す
ただし、
$\left(x^{n}\right)’=nx^{n-1}$($n$ は0以上の整数)
は証明されているとします。つまり、「0以上の整数」を「有理数」に拡張します。
つかうものは次の2つです。
① 合成関数の微分の公式
② 練習問題1の結果 $\left(\dfrac{1}{x}\right)’=-\dfrac{1}{x^{2}}$
先ほど定義通りに計算した結果なので使ってOKです。
$x^{-1}$ では成立することを定義から確かめたが、他の全ての有理数乗でも成立することを示そうとしているのです。
整数全体への拡張
$y=x^{-n}$ ($n$:自然数)のとき、$y’=-nx^{-n-1}$
要するに、「指数が負の数でも今まで通り」であることを証明します。
証明
$y=x^{-n}$ を微分して、
$y’=\left(x^{-n}\right)’$
$\hspace{10pt}=\left\{\left(\dfrac{1}{x}\right)^{n}\right\}’$
$y’=n\left(\dfrac{1}{x}\right)^{n-1}\left(\dfrac{1}{x}\right)’$
$y’=n\left(\dfrac{1}{x}\right)^{n-1}\left(-\dfrac{1}{x^{2}}\right)$
$\hspace{10pt}=nx^{-n+1}\left(-x^{-2}\right)$
$\hspace{10pt}=-nx^{-n-1}$
これで指数が整数全体で成立すると分かりました。
有理数全体への拡張
$y=x^{\frac{l}{m}}$ ( $l$:整数、$m$:自然数)のとき、$y’=\dfrac{l}{m}x^{\frac{l}{m}-1}$
要するに、「指数が分数でも今まで通り」であることを証明します。
証明
$y=x^{\frac{l}{m}}$ の両辺を $m$ 乗して
$y^{m}=x^{l}$
左辺の微分は少し難しいかもしれませんが、
$\left(y^{m}\right)’=my^{m-1}y’$
となりますね。$y$ をカタマリとみた合成関数の微分です。
$y$ は $x$ の関数ですから。
$y$ をカタマリとみて微分すると $my^{m-1}$、カタマリを微分して $y’$ です。
つまり両辺を微分した結果は、
$my^{m-1}y’=lx^{l-1}$
となります。この計算は少し慣れが必要かもしれないですね。
あとは $y’$ をもとめるわけですから、次のように変形していきます。
$y’=\dfrac{lx^{l-1}}{my^{m-1}}$
$\hspace{10pt}=\dfrac{lx^{l-1}}{m\left(x^{\frac{l}{m}}\right)^{m-1}}$
$y’=\dfrac{lx^{l-1}}{mx^{l-\frac{l}{m}}}$
$\hspace{10pt}=\dfrac{l}{m}x^{(l-1)-(l-\frac{l}{m})}$
$\hspace{10pt}=\dfrac{l}{m}x^{\frac{l}{m}-1}$
これで有理数全体で成立するとわかりました。
有理数乗の微分の例
$\dfrac{1}{\sqrt[3]{x}}$ を微分せよ。
解答
$\left(\dfrac{1}{\sqrt[3]{x}}\right)’ =\left(x^{-\frac{1}{3}}\right)’$
$\hspace{38pt}=-\dfrac{1}{3}x^{-\frac{4}{3}}$
$\hspace{38pt}=-\dfrac{1}{3x^{\frac{4}{3}}}$
$\hspace{38pt}=-\dfrac{1}{3x\sqrt[3]{x}}$
と微分することが可能になりました。