ピタゴラス数の性質に関連した問題を解いてみましょう。
ピタゴラス数
三平方の定理のことを「ピタゴラスの定理」とも言いますよね。
三平方の定理 $a^{2}+b^{2}=c^{2}$
をみたす自然数の組のことを、ピタゴラス数といいます。
問題
(1) 自然数 $a,b,c$ が $a^{2}+b^{2}=c^{2}$ をみたすとき、$a,b,c$ のうち少なくとも1つは3の倍数であることを示せ。
(2) $a^{2}+b^{2}=225$ をみたす自然数 $a,b$ の値をすべて求めよ。
(関西大 誘導省略)
準備
まず、準備があります。丁寧な問題であれば次の誘導がついているはずです。
$a^{2}$ を3で割った余りは、0か1であることを示せ。
(ⅰ) $a\equiv0$ (mod3) のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv0$ (mod3)
(ⅱ) $a\equiv1$ (mod3)のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv1$ (mod3)
(ⅲ) $a\equiv2$ (mod3)のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv4\equiv1$ (mod3)
よって、$a^{2}$ を3で割った余りは、0か1である。
平方剰余
「平方剰余」という名前がついていて、先ほど示した例でいうと、どんな整数も2乗したときに3で割って余り2にはならないことが分かったので、これを
「2は3の平方剰余ではない」
のように表現します。
$a$ が3の倍数のときは2乗しても3の倍数
$a$ が3の倍数でないときは2乗すると3で割って余り1
となることです。
(1)の解答
$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは0か1になるのは分かりますね?
「どの数も3の倍数ではない」とすると、おかしなことになるのです。
$a,b,c$ がすべても3の倍数ではないと仮定する。
このとき、$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは1である。
$a$ が3の倍数のときは2乗しても3の倍数
$a$ が3の倍数でないときは2乗すると3で割ると余り1
ですね!
$a^{2}+b^{2}$ は3で割った余りが1+1=2であり、
$c^{2}$ は3で割った余りが1である。
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ が成立せず、矛盾。
よって $a,b,c$ の少なくとも1つは3の倍数である。(証明終わり)
少なくとも1つが5の倍数
$a,b,c$ のうち少なくとも1つは5の倍数
も分かりますよ。
よい練習になると思いますので、やってみてください。
$n\equiv\pm1$ (mod5)なら$n^2\equiv1$ (mod5),
$n\equiv\pm2$ (mod5)なら$n^2\equiv4$ (mod5)
より、一般に整数 $n$ が5の倍数でないとき、$n^{2}$ を5で割った余りは1か4になる。
$a,b,c$ がすべて5の倍数でないと仮定すると、
$a^{2}$,$b^{2}$ を5で割った余りの組み合わせが
$(1,1),(1,4),(4,4)$
のいずれの場合でも $c^{2}$ を5で割った余りの1または4と等しくならず、
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ を成立させない。
よって $a,b,c$ のうち少なくとも1つは5の倍数である。
(2)の解答
(2) $a^{2}+b^{2}=225$ をみたす自然数 $a,b$ の値をすべて求めよ。
これと(1)から、分かることはありませんか?
(1)で分かったことは「$a,b,c$ のうち少なくとも1つが3の倍数」なので、$c$ が3の倍数と分かっても残りの2つがどうであるかは…
平方剰余に注目しましたよね。
右辺の余りが0になるから、左辺の余りを0にするには、$a$ も $b$ も3の倍数にするしかない!
$a^{2}+b^{2}=225$ は自然数 $a’,b’$ を使って
$a=3a’$,$b=3b’$
とおいて、
$9a’^{2}+9b’^{2}=225$
$a’^{2}+b’^{2}=25$
と書き換えられる。
よって…
$(a,b)=(9,12),(12,9)$(解答おわり)
答案
(1)
自然数 $a$ について
(ⅰ) $a\equiv0$ (mod3) のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv0$ (mod3)
(ⅱ) $a\equiv1$ (mod3)のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv1$ (mod3)
(ⅲ) $a\equiv2$ (mod3)のとき
$\hspace{2em}a^{2}\equiv4\equiv1$ (mod3)
よって
$a$ が3の倍数のとき $a^{2}$ を3で割った余りは0
$a$ が3の倍数でないとき $a^{2}$ を3で割った余りは1である。
ここで $a,b,c$ がすべても3の倍数ではないと仮定する。
このとき、$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは1である。
$a^{2}+b^{2}$ は3で割った余りは2であり、
$c^{2}$ は3で割った余りが1である。
$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ が成立せず、矛盾。
よって $a,b,c$ の少なくとも1つは3の倍数である。(証明終わり)
(2)
$a^{2}+b^{2}=225$
右辺が3の倍数より左辺も3の倍数になるが、(1)と同様に考えて、$a^{2},b^{2}$ ともに3の倍数にならないといけない。
自然数 $a’,b’$ を用いて
$a=3a’,b=3b’$
とおいて、
$9a’^{2}+9b’^{2}=225$
$a’^{2}+b’^{2}=25$
となるから、$(a’,b’)=(3,4),(4,3)$
よって、$(a,b)=(9,12),(12,9)$
(解答おわり)