対数の直感的定義
$\log_{a}b$ は、「$a$を底とした$b$の対数」といい、普段は単に「ログエービー」とか「ログエーのビー」などと読みます。
直感的には「$a$を何乗したら$b$になるか」を意味します。
例えば、$\log_{3}9$ は、「3を何乗したら9になるか」です。何乗したらいいですか?
2乗ですね。
対数の計算練習①
次の対数の値を求めよ。
(1) $\log_{2}8$
(2) $\log_{\frac{1}{3}}{27}$
(3) $\log_{2}{\sqrt{2}}$
(4) $\log_{4}8$
(5) $\log_{5}\dfrac{1}{5\sqrt{5}}$
(6) $\log_{0.01}{10\sqrt{10}}$
(1)$3$ (2)$-3$(3)$\frac{1}{2}$(4)$\frac{3}{2}$(5)$-\frac{3}{2}$(6)$-\frac{3}{4}$
では(4)から。「4を何乗したら8になるか」ですが。
$\sqrt{4}$ を3乗したら8になりますよね?
これは4を何乗したことになりますか?
あ…4の$\frac{1}{2}$乗の3乗だから、$\frac{3}{2}$乗です!
(5)(6)も同様に考えられますか?
(5)は$\sqrt5$ を逆数にして、3乗したらいいので…
$-\frac{3}{2}$ 乗です!
(6)は…0.01を逆数にしてルートをとると10、それをさらにルートをとって3乗するから…
$-\frac{1}{2}$ 乗の$\frac{1}{2}$ 乗の3乗で、$-\frac{3}{4}$ ですね!難しい…
数式による対数の定義
先ほどは言葉で対数を定義しましたが、式で対数を定義するとこのようになります。
$a^{c}=b$ ⇔ $\log_{a}b=c$
「$a$ を$c$ 乗したら$b$ になる。この$c$ のことを$\log_{a}b$ と呼ぶ。」
と言っているわけです。
教科書ではこの定義で書かれていることが多いです。
対数の定義(簡略版)
$a^{c}=b$ に $c=\log_{a}b$ を代入することで、対数の定義を1本にまとめることができます。
$a^{\log_{a}b}=b$
もともとの定義式から$c$ を消去しただけですが、これが意外と強力です。
例えば次の問題を考えてみましょう。
2を何乗したら3になるか…?
$\log_{2}3$ が求まらないので、どうやったらいいか…
あ、これなら…
$\log_{2}32$ は…(…2、4、8、16…だから…)…5ですよね。ということは$2^5$ということだから、(…2、4、8、16…)えっと…32ですね!
ですよね。「2を”それ”乗すると32になる数」を探した結果が$\log_{2}32=5$だったわけですからね。5乗したら32になるに決まっています。
では改めて。$2^{\log_{2}3}$ の値は何ですか?
$a^{\log_{a}b}=b$ は対数の定義でもあり、公式でもあります。これを利用して、次の問題をやってみてください。
対数の計算練習②
次の値を求めよ。
(1) $16^{\log_{2}3}$
(2) $7^{\log_{49}4}$
(3) $\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^{3\log_{2}5}$
(1)81 (2)2 (3)$\dfrac{1}{5\sqrt{5}}$
$16=2^4$ なので、$\left(2^{4}\right)^{\log_{2}3}$ と変形してみるとどうでしょう。
さらに指数を入れ替えて$\left(2^{\log_{2}3}\right)^{4}$とできますか?
なるほど。
$2^{\log_{2}3}$ は3だから、3の4乗で81が答えですね!
(2) $7^{\log_{49}4}$=$\left(49^{\frac{1}{2}}\right)^{\log_{49}4}$=$\left(49^{\log_{49}4}\right)^{\frac{1}{2}}=4^{\frac{1}{2}}=2$
(3) $\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^{3\log_{2}5}=\left(2^{-\frac{1}{2}}\right)^{3\log_{2}5}=\left(2^{\log_{2}5}\right)^{-\frac{3}{2}}=\dfrac{1}{5\sqrt{5}}$
対数の計算法則
この定義式を使って、次の4つの公式を導くことができます。
1.$\log_{a}MN=\log_{a}M+\log_{a}N$
2.$\log_{a}\dfrac{M}{N}=\log_{a}M-\log_{a}N$
3.$\log_{a}M^k=k\log_{a}M$
4.$\log_{a}b=\dfrac{\log_{c}b}{\log_{c}a}$
公式4は底 $c$ に適切な数を選びます。(計算しやすいものを自分で設定できます)
底を変えることができるので、底の変換公式と呼ばれます。
証明
これらの公式を作ってみましょう。
1の証明
対数の定義(簡略版)から、
$a^{\log_{a}M}=M$ ……①
$a^{\log_{a}N}=N$ ……②
$a^{\log_{a}MN}=MN$ ……③
が言えます。ここで③=①×②であることから、
$a^{\log_{a}MN}=a^{\log_{a}M}a^{\log_{a}N}$
指数法則より
$a^{\log_{a}MN}=a^{\log_{a}M+\log_{a}N}$
となるので、指数を比較すれば
$\log_{a}MN=\log_{a}M+\log_{a}N$
がわかります。
2の証明
1と同様なので省略します。
3の証明
対数の定義(簡略版)から、
$a^{\log_{a}M}=M$ ……①
$a^{\log_{a}M^{k}}=M^{k}$ ……②
が言えます。ここで②=(①の$k$乗)より、
$a^{\log_{a}M^{k}}=\left(a^{\log_{a}M}\right)^{k}$
指数法則から
$a^{\log_{a}M^{k}}=a^{k\log_{a}M}$
となるので、指数を比較すれば
$\log_{a}M^k=k\log_{a}M$
がわかります。
4の証明
対数の定義(簡略版)から、
$a^{\log_{a}b}=b$
両辺を底$c$ の対数をとって
$\log_{c}a^{\log_{a}b}=\log_{c}b$
公式3より
$\log_{a}b\log_{c}a=\log_{c}b$
よって
$\log_{a}b=\dfrac{\log_{c}b}{\log_{c}a}$
が言えます。
対数の基本公式の利用
4つの公式を活用していきましょう。
対数の計算練習③
(1) $6\log_{2}\sqrt[3]{10}-2\log_{2}5$
(2) $\dfrac{1}{2}\log_{10}\dfrac{5}{6}+\log_{10}\sqrt{7.5}+\dfrac{1}{2}\log_{10}1.6$
(4) $(\log_{2}9+\log_{8}3)(\log_{3}16+\log_{9}4)$
(1) 2 (2) $\frac{1}{2}$ (3) 2 (4) $\frac{35}{3}$
(1) $6\log_{2}\sqrt[3]{10}-2\log_{2}5$
$=\log_{2}\left(10^{\frac{1}{3}}\right)^{6}-\log_{2}5^{2}$
$=\log_{2}\dfrac{10^{2}}{5^{2}}=\log_{2}4=2$
(2) $\dfrac{1}{2}\log_{10}\dfrac{5}{6}+\log_{10}\sqrt{7.5}+\dfrac{1}{2}\log_{10}1.6$
$=\log_{10}\sqrt{\dfrac{5}{6}}+\log_{10}\sqrt{\dfrac{15}{2}}+\log_{10}\sqrt{\dfrac{8}{5}}$
$=\log_{10}\sqrt{\dfrac{5}{6}・\dfrac{15}{2}・\dfrac{8}{5}}$
$=\log_{10}\sqrt{10}=\dfrac{1}{2}$
(3) $\left(\log_{2}\sqrt{3}-\log_{3}\sqrt{2}+\log_{9}2+\log_{4}3\right)\log_{3}4$
$=\left(\dfrac{1}{2}\log_{2}3-\dfrac{1}{2}\log_{3}2+\dfrac{\log_{3}2}{\log_{3}9}+\dfrac{\log_{2}3}{\log_{2}4}\right)\log_{3}4$
$=\left(\dfrac{1}{2}\log_{2}3-\dfrac{1}{2}\log_{3}2+\dfrac{1}{2}\log_{3}2+\dfrac{1}{2}\log_{2}3\right)\log_{3}4$
$=\log_{2}3・\log_{3}4=\log_{2}3\dfrac{\log_{2}4}{\log_{2}3}=2$
(4) $(\log_{2}9+\log_{8}3)(\log_{3}16+\log_{9}4)$
$=\left(2\log_{2}3+\dfrac{\log_{2}3}{\log_{2}8}\right)\left(4\log_{3}2+\dfrac{\log_{3}4}{\log_{3}9}\right)$
$=\left(2\log_{2}3+\dfrac{\log_{2}3}{3}\right)\left(4\log_{3}2+\dfrac{2\log_{3}2}{2}\right)$
$=\left(\dfrac{7}{3}\log_{2}3\right)\left(5\log_{3}2\right)=\dfrac{35}{3}$
$\dfrac{1}{2}\log_{2}3-\dfrac{1}{2}\dfrac{\log_{2}2}{\log_{2}3}+\dfrac{\log_{2}2}{\log_{2}9}+\dfrac{\log_{2}3}{\log_{2}4}$
$=\dfrac{1}{2}\log_{2}3-\dfrac{1}{2\log_{2}3}+\dfrac{1}{2\log_{2}3}+\dfrac{\log_{2}3}{2}$
$=\log_{2}3$