三角関数

三角関数の合成

三角関数の合成は学校で習っていて、合成する方法は知っているんですが、仕組みがよくわかっていないんです。

順を追って教えてもらうことはできますか?

合成はできるけど、「なぜそれで合成できるか」が分からないということですね。
そうなんです!

加法定理を逆算する

まずは原理原則から考えていくので、結構難しくなります。

加法定理により、例えば

$\sin\left(x+\dfrac{\pi}{3}\right)$

$=\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x$

となるのは分かりますね?

これを逆算するのを合成と言います。

逆算…

(右辺)=$\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x$

を先に見せられて、もともとが

(左辺)=$\sin\left(x+\dfrac{\pi}{3}\right)$

であったことを逆算するのです。

なんだか急に難しくなりますね…

まずは

$\dfrac{1}{2}$$\sin x+$$\dfrac{\sqrt{3}}{2}$$\cos x$

と、加法定理から$\sin(x+\alpha)$を展開した

$\sin x$$\cos\alpha$$+\cos x$$\sin\alpha$

とを見比べて、

$\cos\alpha=\dfrac{1}{2}$

$\sin\alpha=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$

となる角を探します。このような $\alpha$ は見つかりますか?

$\alpha=\dfrac{\pi}{3}$ です!

というわけで

$\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x$

$=\sin x\cos\dfrac{\pi}{3}+\cos x\sin\dfrac{\pi}{3}$

となって、

$\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x=\sin\left(x+\dfrac{\pi}{3}\right)$

と合成できるのです。

合成は特別新しいことをしているのではなくて、結局は加法定理を使っていただけなのですね。(でも難しい…)

係数をくくりだす

どんな場合でも加法定理がそのまま使えるわけではありません。例えば次の場合を見てみましょう。

$\sin x+\sqrt{3}\cos x$

をこのまま

$\cos\alpha=1$

$\sin\alpha=\sqrt{3}$

としてもそんな角はありません

そこでいったん2をくくりだして

$2\left(\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x\right)$

とすれば先ほどと同じことができるようになり、

$2\sin\left(x+\dfrac{\pi}{3}\right)$

と合成されます。

確かに2をくくりだすと上手くいきました。でもなぜ2をくくりだすと良いと分かるのでしょう?

$\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha=1$ をみたすようににくくりだしました。

1 と $\sqrt{3}$ のままでは $1^{2}+\sqrt{3}^{2}=4$

となって、$\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha=1$ を満たさなくなってしまいます。

右辺を1にするために両辺を4で割ると $\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}+\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right)^{2}=1$ となりますから、2で割れば $\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha=1$ が成立すると分かります。

なるほどです!

形式的な合成手順

$\sin x+\sqrt{3}\cos x$ の合成をもう少し機械的にやることを考えましょう。

はじめは理由をしっかり考えながらゆっくり進めていきます。

まず、くくりだす数 $r$ が何かは分からないとしておいて、いったん

$r\left(\dfrac{1}{r}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{r}\cos x\right)$

と変形します。

$\cos\alpha=\dfrac{1}{r}$,$\sin\alpha=\dfrac{\sqrt{3}}{r}$

となるわけですが、これは $\cos\alpha:\sin\alpha=1:\sqrt{3}$ であることを意味します。

$\cos\alpha$ が $x$ 座標

$\sin\alpha$ が $y$ 座標であることを考えて、$\alpha$ は図形的に

$\alpha=\dfrac{\pi}{3}$ と求めることができます。(下図)

ところで、$\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha=1$を満たさねばいけませんから、$\left(\dfrac{1}{r}\right)^{2}+\left(\dfrac{\sqrt{3}}{r}\right)^{2}=1$

つまり、$r=\sqrt{1^{2}+\sqrt{3}^{2}}=2$ が分かります。

ちょ…どういう変形をしたんですか?

分母の $r^{2}$ を払ってルートをとったんです。両辺に $r^{2}$ をかけると、$1^{2}+\sqrt{3}^{2}=r^2$ となりますから。

これは、$r$ が上の図の斜辺の長さであることを意味します。(三平方の定理より)

色々と理由を積み上げてきましたが、結局は上の図から読み取るだけ

$r=2$, $\alpha=\dfrac{\pi}{3}$ が分かり、

$2\left(\cos\dfrac{\pi}{3}\sin x+\sin\dfrac{\pi}{3}\cos x\right)$

と変形できることになって、

$2\sin\left(x+\dfrac{\pi}{3}\right)$

と合成できます。

以上の結果をすべて認めてしまって機械的に合成すると、

① $\alpha$ は $\cos\alpha:\sin\alpha=1:\sqrt{3}$ から求める

② $r$ は $\sqrt{1^{2}+\sqrt{3}^{2}}=2$、すなわち斜辺の長さから求める

という手順を踏むことになります。

これが学校でやったのと同じです!

よくある質問

$\sin$ は $y$ 座標、$\cos$ は $x$ 座標…と教わったのですが、合成の場合は逆になっているなーと不思議に思っていたんです。
合成では $\sin$ の係数が $x$ 座標で $\cos$ の係数が $y$ 座標としますからね。でもこれで解決しましたか?
はい!『咲いたコスモス』だから、$\sin$ の係数は $\cos$ で、$\cos$ の係数は $\sin$ なんですね…!
ご明察。

合成が使えるとき

「いつ合成したらいいんですか?」と聞かれることも多いです。

「いつ使ったらいいか」の代わりに、「いつなら使えるか」でお答えしておきましょう。

三角関数の合成が使えるのは、

① サイン,コサイン, どちらも1次である

② 角がそろっている(どちらも $\theta$ やどちらも $2\theta$ )

ことが条件です。

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。