微分

極大値と極小値の差

ここでは、「極大値と極小値の差」を表す重要手法について学びます。

※スマホの場合、横向きを推奨

問題

問題

$f(x)=x^{3}-3x^{2}+3ax$ とする。

(1) $f(x)$ が極値をもつような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。

(2) $f(x)$ の極大値と極小値の差が32となるとき、$a$ の値を求めよ。

極値をもつ条件

(1)は簡単…

$$\begin{align*}f'(x) & =3x^{2}-6x+3a\\& =3(x^{2}-2x+a)\end{align*}$$

$x^{2}-2x+a=0$ の判別式を $D$ として…

$\dfrac{D}{4}=1-a>0$ が条件より、

$a<1$ …(答)

どうして条件が $D>0$ であったかを言えますか?
はい!導関数の値の正負が変わるところが極値になるわけですが、この場合

「正負が変わる場所がある」

⇔「$y=f'(x)$ のグラフが $x$ 軸と2交点を持つ」

だからです。

その通りです。

(2)は解と係数の関係を使って頑張ってもいいのですが、驚くべき解法があり、それをぜひ身に付けてほしいです。

驚くべき解法…!

極大値と極小値の差

さて、極大値と極小値をとるのは、$x$ の値がどんなときでしょうか?

求めることはできますか?

$f'(x)=0$ のときに極値を持ちますから、2次方程式を解いたらいいですよね!
そう、$x^{2}-2x+a=0$ の2解が極大、極小となる $x$ の値です。

その値を、$x=\alpha,\beta$ とおいておきましょう。

ここで $\alpha<\beta$ とするなら、$f(\alpha)$ と $f(\beta)$ のうちどちらが極大値ですか?

(最高次の係数が正なので…)グラフの形を考えれば,$f(\alpha)$ が極大、$f(\beta)$ が極小です。
つまり、「極大値と極小値の差」は、

$$f(\alpha)-f(\beta)$$

です。

さて、ここで驚くべき変形をします。

(驚くべき……!)

$$f(\alpha)-f(\beta)=\int_{\beta}^{\alpha}f'(x)dx$$

↑このように変形をしました。

「なぜこの変形をするか」は一旦置いて、等式が成立することは間違いないですか?

これは…

そうか、$f'(x)$ を積分すると $f(x)$ だから…

$$\begin{align*}\int_{\beta}^{\alpha}f'(x)dx & =\bigl[f(x)\bigr]_{\beta}^{\alpha}\\& =f(\alpha)-f(\beta)\end{align*}$$

↑こうなるので、確かに間違いはないです…

…しかしこれは一体…!?

計算を続けてみましょう。

$f'(x)=3(x^{2}-2x+a)$ と、$f'(x)=0$ の解が $\alpha,\beta$ であることから因数分解できることに注目します。

$$\begin{align*}{f(\alpha)-f(\beta)} & =\int_{\beta}^{\alpha}f'(x)dx\\& =\int_{\beta}^{\alpha}3(x^{2}-2x+a)dx\\& =\int_{\beta}^{\alpha}3(x-\alpha)(x-\beta)dx\end{align*}$$

$\int_{\beta}^{\alpha}(x-\alpha)(x-\beta)dx$ …

ああ!この形は…!

$\frac{1}{6}$ 公式の利用

これは、$\dfrac{1}{6}$公式ですね!
正負で混乱しやすいですが、この先の計算はできそうですか?
$\alpha<\beta$ としたわけですから…

積分区間の上下が大小逆転しているので…

$$3\int_{\beta}^{\alpha}(x-\alpha)(x-\beta)dx=-3\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx$$

こう書き換え…

$$\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx=-\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$$

$\frac{1}{6}$公式はこう↑だから…

$$3\int_{\beta}^{\alpha}(x-\alpha)(x-\beta)dx=\dfrac{1}{2}(\beta-\alpha)^{3}$$

こうです!
その通り。$\frac{1}{6}$公式

$\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx=-\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$

は右辺にマイナスが付いていますが、その理由をグラフ的な意味から言えますか?

$y=(x-\alpha)(x-\beta)$ のグラフは下に凸な放物線を表しますから、

定積分 $\int_{\alpha}^{\beta}(x-\alpha)(x-\beta)dx$ は当然、負の値になります。

面積はいくらかと聞かれれば $+\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$ となりますし、

定積分の値を聞かれれば $-\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^{3}$ となります。

完璧です。

極大値と極小値の差の条件

$f(\alpha)-f(\beta)=32$ が与えられた条件でした。

$$f(\alpha)-f(\beta)=\dfrac{1}{2}(\beta-\alpha)^{3}$$

この関係がわかったわけですから、

$$\dfrac{1}{2}(\beta-\alpha)^{3}=32$$

を解けば良いのです。
ということは、$\beta-\alpha$ を $a$ で表す…が次の目標ですね。
ここで、解と係数の関係です。
欲しいのは $\beta-\alpha$ なので、解と係数の関係から組み立てると…

$$\beta-\alpha=\sqrt{(\beta+\alpha)^{2}-4\alpha\beta}$$

こうですね!
$\beta-\alpha>0$ に注意ですね。

$\alpha,\beta$ は $x^{2}-2x+a=0$ の2解でした。よって…

$(\beta+\alpha)^{2}-4\alpha\beta=2^{2}-4a=4-4a$ より

$\beta-\alpha=\sqrt{4-4a}=2\sqrt{1-a}$

ということは、(極大値)-(極小値)=32なので…

$f(\alpha)-f(\beta)=32$

$\dfrac{1}{2}(\beta-\alpha)^{3}=32$

$\dfrac{1}{2}(2\sqrt{1-a})^{3}=32$

$4(\sqrt{1-a})^{3}=32$

$(\sqrt{1-a})^{3}=8$

$\sqrt{1-a}=2$

$1-a=4$

$a=-3$

これは $a<1$ をみたす。 …(解答終わり)

できました!
ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。