数学A

合同式 速習講座

合同式は様々な場面で使える便利な記法です。見た目よりも難しくないですから、使い慣れてしまいましょう。

合同式の定義

合同式の定義

$a$と$b$を$n$で割った余りが等しいとき、

$a$≡$b$($\rm{mod}$ $n$)

と書く。

例えば、

12≡2(mod 5)

と書けば、12と2は、5で割った余りが等しい

ということを意味します。

他にも、

12≡7(mod 5)

と書いて、12と7は、5で割った余りが等しい

としても構いません。

これ自体は大した意味を持ちません。余りのみに注目したいときに、省略して書ける便利な記法だということです。

合同式の利用

合同式の表記

27≡2≡-3(mod 5)

のように、つなげて書くこともできます。

(順に5の倍数を引いていっているだけです。)

「-3を5で割った余り」…って、わかりにくいですね…
割る数5を足したり引いたりしても余りは変わらないことに注目するといいですよ。

2から5を引いたー3も5で割ると余り2なんです。

例題1

8×9×10×11を7で割った余りを求めよ。

8≡1,9≡2,10≡3,11≡4(mod 7)

なので、

8×9×10×11≡1×2×3×4≡24≡3(mod 7)

より、余りは3です。

ええっ、こんなことして大丈夫なんですか?

簡単すぎて不安になりますか?

8×9×10×11=(7+1)×(7+2)×(7+3)×(7+4)と変形して、これを展開してみましょう。

$(7+1)×(7+2)×(7+3)×(7+4)$
$=7^{4}+1\cdot7^{3}+2\cdot7^{3}+3\cdot7^{3}+\cdots+1\cdot2\cdot3\cdot4$
途中を省略してしまいましたが、項のうちほとんどには7が掛かっていますね。

7の倍数にならないものはどれですか?

あっ、$1\cdot2\cdot3\cdot4$だけです!

7で割った余りを求めたいわけですが、注目しないといけないのは $1\cdot2\cdot3\cdot4$ だけです。

他の7の倍数は捨ててしまって構わないのです。

なるほど…
今は展開してから7の倍数を捨てたわけですが、展開する前に捨ててしまってもかまわないというのが合同式の基本的な考え方です。

例題2

$7^{100}$を6で割った余りを求めよ。

$7≡1({\rm mod}\,6)$なので、

$7^{100}≡1^{100}≡1({\rm mod}\,6)$

より、余りは1。

6を捨てたんですよね。でも本当にこれでいいのか不安になります…
また展開して確かめましょう。$7^{100}=(6+1)^{100}$ なので、これを展開すると…
二項定理ですね!
$$(6+1)^{100}=6^{100}+_{100}{\rm C}_{1}\cdot6^{99}\cdot1+_{100}{\rm C}_{2}\cdot6^{98}\cdot1^{2}+…+1^{100}$$
6の倍数でないのは$1^{100}$だけだから、これも大丈夫ですね!

例題3

$2^{100}$を7で割った余りを求めよ。
さっきは割る数6が7より小さかったので6を引いて 7-6=1 とできましたが、今回はどうですか?
2が7より小さいので引くことができません。
そうですね。そこで、いったん2に7より大きくなってもらいましょう。

$2^{3}=8$とすれば7より大きくなりますから、8-7=1とできますね。解答はこうです。

$2^{100}≡8^{33}\cdot2≡1^{33}\cdot2≡2({\rm mod}\,7)$

より、余りは2。

えっと、$8^{33}\cdot2$というのは…
$2^{100}$は2を100回かけているわけですから、$2^3$を33回かけて、もう1回だけ2をかければ2を100回かけたことになります。
なるほどです!

例題4

$2^{100}$を9で割った余りを求めよ。
今度もいったん2に大きくなってもらう必要がありますね。さっきの例題では3乗すればよかったですが、今度は何乗すればよいですか?
9を超えればいいから、4乗ですか…?
$2^4=16$は9を超えますが、16-9=7となって、簡単になっていないですね。前の例題では8-7=1と、「1」が出来たのが計算が楽になったポイントですよね。9の倍数を捨てて「1」になるのは、2の何乗でしょうか?
……
言い換えると、(9の倍数)+1となる数を、2の累乗で作れますか?
…あっ!64=9×7+1です!
ということは、$2^6$を作ればよくて…

$2^{100}≡64^{16}\cdot2^{4}≡1^{16}\cdot16≡7({\rm mod}\,9)$

より、余りは7。

今度は$64^{16}\cdot2^{4}$の意味は大丈夫ですか?
はい!

別解

「1」を作るのがポイントだったわけですが、「-1」を作っても上手くいくんです。

(9の倍数)-1となる数を、2の累乗で作れますか?

それなら…$2^3=8$が9-1です!
そう。$8≡(-1)$なので…

$2^{100}≡8^{33}\cdot2≡(-1)^{33}\cdot2≡-2≡7({\rm mod}\,9)$

より、余りは7。

$-2≡7$…?
9で割った余りですから、9を足しているんです。
あ、わかりました!
ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。