「場合の数」と「確率」の違いは、生徒にとって混乱しやすい問題のようです。
今回は、場合の数・確率が苦手な「かなこ」さんを混乱の渦に巻き込みます。
問題
次の問いに答えよ。
1,1,2,3 が描かれた4枚のカードがある。ここから無作為に2枚とって並べ、2桁の数を作る。
(1) 2桁の数は何通りできるか。
(2) 「21」ができる確率を求めよ。
簡単な問題なのですが、場合の数・確率が苦手な生徒は正解しにくいです。
(1) 場合の数の数え方
「並べる」なら、Pを使ったらいいですか?
残念ながら、これはPでもCでもありません。
なんでもかんでも公式と思うのがそもそもの間違いです。
正解は、1つ1つ数えて、
11,12,13,21,23,31,32
の7通りです。
数えないとダメなんですか?
1が2枚ありますからね。同じものが混ざっているので、単純な計算では解決しません。
2種類の1のカードを区別しないというのが肝ですね。
(…ふーん…)
(2) 確率の数え方
11,12,13,21,23,31,32の7通りのうち1つだから、$\dfrac{1}{7}$ですか?
いいえ。カード4枚から2枚とるので、4×3の12通りの並べ方があります。
そのうち21となるのは2通りあるので、正解は$\dfrac{2}{12}=\dfrac{1}{6}$です。
ちょ、12通りって…
さっきは並べ方は7通りじゃなかったでしたか?
そうですね。人間の都合では7通りですね。
人間の都合…?
同じ「1」が描かれているとはいえ、本当は別のカードですよね。印刷のズレがあるかもしれないし、汚れ具合が違うかもしれない。
そこに勝手に「1」という意味を見出して「同じだ」と思っているのは人間だけです。犬に見せてもその2枚が特別同じだなんて思いませんよ。
えええ…でも区別はできないですよね?
区別できなくても、本当は別のものです。人間には区別ができなくても、神様には区別ができるので、確率を計算するときは区別します。つまり、4種類のカードがあると考える必要があります。
神様…
確率を決めるのは人間ではなく神様ですから。
でも(1)では区別できないからって…
場合の数を決めるのは神様ではなく人間なんです。「人間にとって区別できるのは何通りか」を聞いているのが(1)です。
神様…
同様に確からしい
神様に区別してもらった結果おこるのが、人間の区別による分類では同様に確からしくならないということです。
11,12,13,21,23,31,32のうち、例えば 12 は作られやすく、32 は作られにくいです。
なぜならば、1,1,2,3から2つとって「12」を作る方法は 12 と 12 の2種類ありますが、「32」は 32 しかありません。「12」「32」は同様に確からしくないので、これらを同列に並べて確率を計算することはできないんです。
あ、それは確かに…
逆に、12 と 32 は同様に確からしいですね。
分かったような、分からないような…
深い理解には時間がかかりますね。
「区別する」と「区別しない」の話も、また機会があれば。