数学2

2つの図形の交点を通る図形

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2つの図形の交点を通る図形

今回は、次の定理の利用を覚えましょう。
2つの図形の交点を通る図形

$f(x,y)+k\cdot g(x,y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず、2つの図形

$f(x,y)=0$ と $g(x,y)=0$ の交点を通る。

ああ、これ見たことあります。いつも分からなくなっちゃうんです…
そもそも、この主張の意味が分からないですよね。

具体的で見やすい例でまずは意味から理解しましょう。

具体例

たとえば具体的な式を入れて、こうしたらどうでしょう。
2つの図形の交点を通る図形

$(x+y-2)+k(x-y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず、2つの図形

$x+y-2=0$ , $x-y=0$

の交点を通る。

……
…これでもまだ分かりにくいですかね。

順番に考えていきましょう。

あ、$x+y-2=0$ と $x-y=0$ の交点…はわかります!
$2$ 本の直線の交点なので、$(1,1)$ です!
連立方程式を解けばいいですね。図形的に考えるだけでもすぐに分かるでしょう。
はい、暗算でいけました!

次に $(x+y-2)+k(x-y)=0$ ですが、$k$ に色々な値を入れて、図形がどう変わるかを考えましょう。

例えば  $k=0$ とするとどうなりますか

$x+y-2=0$ ですね。
$k=1$ とするとどうなりますか?
$2x-2=0$ だから、$x=1$ ↓ですね。
$k=2$ とすると?
$3x-y-2=0$ ↓ですね。
$k=-1$ では?
$2y-2=0$ だから、$y=1$ ↓です!
これらは、どれも $(1,1)$ を通りますか?
通ってますね…
というわけで、改めて先ほどの主張を確認しましょう。少し補足をした表現で書きます。
2つの図形の交点を通る図形

$(x+y-2)+k(x-y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値を色々変えると様々な直線に変わるが、

どのような $k$ の値を入れても、2つの図形

$x+y-2=0$ , $x-y=0$

の交点、すなわち $(1,1)$ を通る。

なるほど…言いたいことは分かりました…
でも、まだその理由までは分からないですか?
はい、不思議です…
では、「通る」の意味から確認します。

グラフがある点を通るのは、方程式が成り立つとき、つまりその座標を $x,y$ に代入して成立するときです。

ここまでは大丈夫ですか?

それは大丈夫です!
$x+y-2=0$ と $x-y=0$ の交点 $(1,1)$ は、

$x+y-2=0$ と $x-y=0$ どちらに入れても等式を成立させる。これもOKですか?

大丈夫です!交点だから「どちらも $(1,1)$ を通る」ってことですよね!
では、$(x+y-2)+k(x-y)=0$ は $(1,1)$ を通りますか
$(1,1)$ を $(x+y-2)+k(x-y)=0$ に入れて成立するか、なので…
あ…

$0+k\cdot0=0$ になって、絶対に成立します…!

そうです。$x+y-2$ も $x-y$ も $0$ にする座標を入れたのだから、$k$ の値によらず強制的に等式を成立させますね。
なるほど…
改めて主張を見てください。
2つの図形の交点を通る図形

$(x+y-2)+k(x-y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず、2つの図形

$x+y-2=0$ と $x-y=0$

の交点を通る。

どうですか?意味も、理由も理解できましたか?
はい!理解できました!
では、一般的に書かれたものも見てみましょう。
2つの図形の交点を通る図形

$f(x,y)+k\cdot g(x,y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず、2つの図形

$f(x,y)=0$ と $g(x,y)=0$ の交点を通る。

これも理解できます!同じことですね!
では定理を利用して具体的な問題を解きましょう。

問題

問題

$x^{2}+y^{2}=4$ と $x^{2}+y^{2}-2x-4y+3=0$ の $2$ つの交点をA,Bとする。

(1) 直線ABの方程式を求めよ。

(2) 点A,Bと $(3,0)$ を通る円の方程式を求めよ。

AとBの座標を求めて普通に計算したらだめですか?
やってもいいですけど、文字を消去して $2$ 次方程式を解の公式で解いてA、Bの座標に無理数が出てきて…
あ、やめときます…!
無理やり解こうとすると大変そうですね。
はい…

(1)の解答

では上手く解くために、先ほどの主張を思い出しましょう。
2つの図形の交点を通る図形

$f(x,y)+k\cdot g(x,y)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず、2つの図形

$f(x,y)=0$ と $g(x,y)=0$ の交点を通る。

これをそのまま使ってみます。

$(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず

$x^{2}+y^{2}-4=0$ と

$x^{2}+y^{2}-2x-4y+3=0$ の交点(すなわちA、B)を通る。

$x^{2}+y^{2}=4$$x^{2}+y^{2}-4=0$ に変形しているだけで、そのまま使っていることが分かりますか?

はい。$f(x,y)$ を $x^{2}+y^{2}-4$ と、
$g(x,y)$ を $x^{2}+y^{2}-2x-4y+3$ と読み替えたらいいですね!

さて、$x^{2}+y^{2}-4=0$ や $x^{2}+y^{2}-2x-4y+3=0$ 単体では円を表します。

では $(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$ の $k$ の値を変えていくと、どんな図形を表すか分かりますか?

えっと、AとBを通る色々な円になると思います。
$x^2$ と $y^2$ があって、その係数が同じで、その他は $x$ や $y$ の $1$ 次の項までですから、円になりそうですね。そしてそれらは、形は違えどどれもA、Bを通ると。
ですね。
ところがです。$(1)$で求めるものは何ですか?
直線ABです。
あ…直線…?

円じゃない…

$k$ に色々と値を入れると様々な円を表すわけですが、それが円ではなく直線になることはありますか?

$x^2$ と $y^2$ があったら円になってしまいますが…

あ!

$x^2$ と $y^2$ が消えたときは直線になります!

それは、$k$ が何のときですか?
$k=-1$ のときです!
ということは、直線ABの方程式は、こうです。

$(x^{2}+y^{2}-4)+(-1)(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

$-4+2x+4y-3=0$

$2x+4y-7=0$ …(答)

これはAとBを通る図形で、直線ですから、直線ABを求めたことになりますね。

(2)の解答

(2)も同様に考えましょう。

$(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

スタート地点は同じ式です。↑

この方程式が表す図形は、$k$ の値に係わらず、

$x^{2}+y^{2}-4=0$

$x^{2}+y^{2}-2x-4y+3=0$

の交点(すなわちA、B)を通る図形を表します。
さっき使ったのと同じですね!

$k$ を色々変えると色々な円(たまに直線)になって、それらはすべてA、Bを通る…

その円が $(3,0)$ を通りますから…

$(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$ に $(3,0)$ を代入して…

$5+k\cdot6=0$

$k=-\dfrac{5}{6}$

$k$ の値が求まりました!
というわけで、求める円は下のようです。

$(x^{2}+y^{2}-4)-\dfrac{5}{6}(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

これを整理して、

$6(x^{2}+y^{2}-4)-5(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

$6x^{2}+6y^{2}-24-5x^{2}-5y^{2}+10x+20y-15=0$

$x^{2}+y^{2}+10x+20y-39=0$ …(答)

これは円の方程式で、AもBも(3,0)も通るので、求める円の方程式です。

答案

最後に答案にまとめておきます。

(1)

$(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

が表す図形は、定数 $k$ の値に係わらず

$x^{2}+y^{2}-4=0$

$x^{2}+y^{2}-2x-4y+3=0$ の交点を通る。

$k=-1$ のとき,

$(x^{2}+y^{2}-4)+(-1)(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

$-4+2x+4y-3=0$

$2x+4y-7=0$

となり,この図形は直線を表し,A,Bを通るから,これは直線ABの方程式である。

(2)

$(x^{2}+y^{2}-4)+k(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$ が $(3,0)$ を通るから,

$5+k\cdot6=0$

$k=-\dfrac{5}{6}$

このとき,

$(x^{2}+y^{2}-4)-\dfrac{5}{6}(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

$6(x^{2}+y^{2}-4)-5(x^{2}+y^{2}-2x-4y+3)=0$

$6x^{2}+6y^{2}-24-5x^{2}-5y^{2}+10x+20y-15=0$

$x^{2}+y^{2}+10x+20y-39=0$

となり円を表すので,これは求める円の方程式である。

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。