微分計算

積の微分と商の微分

ここでは、「積の微分」と「商の微分」の公式の導出をします。

※スマホの場合、横向きを推奨

積の微分

積の微分

$\left\{ f(x)\cdot g(x)\right\}’=f'(x)\cdot g(x)+f(x)\cdot g'(x)$

証明

まずは導関数の定義そのままに式を立てましょう。

導関数の定義

$f'(x)=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$

下のようになります。

$\left\{f(x)\cdot g(x)\right\}’=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x+h)\cdot g(x+h)-f(x)\cdot g(x)}{h}$

ここからどう進んだらいいか…
ちょっとテクニカルに感じるかもしれませんが、

$f(x+h)=f(x)+\dfrac{\Delta f}{\Delta x}h$

と置き換えてみましょう。ただし、

$\dfrac{\Delta f}{\Delta x}=\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ です。

えええ…何をやっているんですか??

$f(x+h)$を、「$f(x)+$(少し)」という見方をします。

この「少し」が $\dfrac{\Delta f}{\Delta x}h$ です。

$\dfrac{\Delta f}{\Delta x}=\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ というのは…

$f(x)+\dfrac{\Delta f}{\Delta x}h$ に入れてみましょう。

$f(x)+\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}h$ を計算すると、確かに

$f(x)+\dfrac{\Delta f}{\Delta x}h=f(x+h)$

となります。

うーん、一応置き換わっていることは分かりましたが…

同様にして、$g(x+h)=g(x)+\dfrac{\Delta g}{\Delta x}h$

ただし $\dfrac{g(x+h)-g(x)}{h}=\dfrac{\Delta g}{\Delta x}$

と置きましょう。

置けるのは分かりました。でも、どうしてこんな風に置くのですか?

$\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ という形は、微分の定義式と同じ形になっていますね。だから、

$\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\Delta f}{\Delta x}=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}=f'(x)$

となるのです。極限をとると $f(x)$ の導関数になるような、導関数の原型を作り出したということです。

なるほど…
なお、$f(x+h)=f(x)+\dfrac{\Delta f}{\Delta x}h$ という形が

「(初期値)+(傾き)×(移動距離)」

という1次近似の形をしているのも変形のポイントです。

少し難しいので、詳しい話は機会があれば。

計算を続けます。

$\left\{ f(x)\cdot g(x)\right\}’$

$=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x+h)\cdot g(x+h)-f(x)\cdot g(x)}{h}$

$=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\left\{ f(x)+\frac{\Delta f}{\Delta x}h\right\} \left\{ g(x)+\frac{\Delta g}{\Delta x}h\right\} -f(x)\cdot g(x)}{h}$

ここで、極限をとる前に展開して約分すると…

$=\underset{h→0}{\lim}\dfrac{f(x)\cdot g(x)+\frac{\Delta f}{\Delta x}g(x)h+f(x)\frac{\Delta g}{\Delta x}h+\frac{\Delta g}{\Delta x}\cdot \frac{\Delta f}{\Delta x}h^2-f(x)\cdot g(x)}{h}$

$=\underset{h→0}{\lim}\left(\dfrac{\Delta f}{\Delta x}g(x)+f(x)\dfrac{\Delta g}{\Delta x}+\dfrac{\Delta g}{\Delta x}\cdot \dfrac{\Delta f}{\Delta x}h\right)$

あっ、ここで $\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\Delta f}{\Delta x}=f'(x)$ と

$\underset{h→0}{\lim}\dfrac{\Delta g}{\Delta x}=g'(x)$ を使えば…

$$\left\{ f(x)\cdot g(x)\right\}’=f'(x)\cdot g(x)+f(x)\cdot g'(x)$$

示せました!
公式をつかって微分してみましょう。

例題

問題

$x^{3}\left(3x-1\right)^{4}$ を微分せよ。

まずは積の微分の公式通りに…

$\left\{ x^{3}\left(3x-1\right)^{4}\right\}’=3x^{2}\left(3x-1\right)^{4}+x^{3}\left\{ \left(3x-1\right)^{4}\right\}’$

後ろは合成関数の微分を使いますね。

$\hspace{65pt}=3x^{2}\left(3x-1\right)^{4}+x^{3}\cdot 4\left(3x-1\right)^{3}\cdot 3$

あとは整理しましょう。共通因数 $3x^{2}\left(3x-1\right)^{3}$ があることに気をつけて計算するとこうなります。

$\hspace{65pt}=3x^{2}\left(3x-1\right)^{3}(3x-1+4x)$

$\hspace{65pt}=3x^{2}\left(3x-1\right)^{3}\left(7x-1\right)$ ・・・答え

これって、因数分解した形でないとダメなんですか?

絶対ダメなわけではないですが、普通は展開したりはしないですね。

増減を調べるときを思い出してください。因数分解しますよね。

商の微分

商の微分

$\left\{ \dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\dfrac{f'(x)\cdot g(x)-f(x)\cdot g'(x)}{\left\{ g(x)\right\} ^{2}}$

証明

積の微分がみちびけたら、商の微分の公式を作るのは簡単です。

$\left\{ \dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\left\{ f(x)\cdot \dfrac{1}{g(x)}\right\}’$

こう変形してから積の微分を使います。

$\hspace{40pt}=f'(x)\cdot \left\{ \dfrac{1}{g(x)}\right\} +f(x)\cdot \left\{ \dfrac{1}{g(x)}\right\}’$

後ろの微分は合成関数の微分を使います。

$g(x)$ をカタマリとみるから、

$\left\{ \dfrac{1}{g(x)}\right\}’=-\dfrac{1}{\left\{ g(x)\right\} ^{2}}\cdot g'(x)$

ですね。

そうです。あとは通分すると…

$\hspace{40pt}=f'(x)\cdot \left\{ \dfrac{1}{g(x)}\right\} +f(x)\cdot \left\{ -\dfrac{g'(x)}{\left\{ g(x)\right\} ^{2}}\right\}$

$\hspace{40pt}=\dfrac{f'(x)\cdot g(x)-f(x)\cdot g'(x)}{\left\{ g(x)\right\} ^{2}}$

示せましたね!

$$\left\{ \dfrac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\dfrac{f'(x)\cdot g(x)-f(x)\cdot g'(x)}{\left\{ g(x)\right\} ^{2}}$$

公式を使って微分してみましょう。

例題

問題

$\dfrac{x^{3}}{x^{2}+1}$ を微分せよ。

解答

$\left\{ \dfrac{x^{3}}{x^{2}+1}\right\}’=\dfrac{3x^{2}\left(x^{2}+1\right)-x^{3}\cdot 2x}{\left(x^{2}+1\right)^{2}}$

$\hspace{50pt}=\dfrac{3x^{4}+3x^{2}-2x^{4}}{\left(x^{2}+1\right)^{2}}$

$\hspace{50pt}=\dfrac{x^{2}\left(x^{2}+3\right)}{\left(x^{2}+1\right)^{2}}$

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。