数学A

ピタゴラス数の性質

ピタゴラス数の性質に関連した問題を解いてみましょう。

ピタゴラス数

ピタゴラス数…?

三平方の定理のことを「ピタゴラスの定理」とも言いますよね。

三平方の定理 $a^{2}+b^{2}=c^{2}$

をみたす自然数の組のことを、ピタゴラス数といいます。

なるほど、例えば(3,4,5)とか(5,12,13)とか…
ピタゴラス数がみたすべき性質に関連する次の問題をやってみましょう。

問題

問題

(1) 自然数 $a,b,c$ が $a^{2}+b^{2}=c^{2}$ をみたすとき、$a,b,c$ のうち少なくとも1つは3の倍数であることを示せ。

(2) $a^{2}+b^{2}=225$ をみたす自然数 $a,b$ の値をすべて求めよ。

(関西大 誘導省略)

準備

まず、準備があります。丁寧な問題であれば次の誘導がついているはずです。

(1)への誘導

$a^{2}$ を3で割った余りは、0か1であることを示せ。

これ、教科書で見たことあります!
合同式を使って書いてもいいですか?
はい…!多分…

(ⅰ) $a\equiv0$ (mod3) のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv0$ (mod3)

(ⅱ) $a\equiv1$ (mod3)のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv1$ (mod3)

(ⅲ) $a\equiv2$ (mod3)のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv4\equiv1$ (mod3)

よって、$a^{2}$ を3で割った余りは、0か1である。

やっていることは単純ですね!

平方剰余

2乗したときの余りは、整数の性質を考える上で重要なテーマです。

平方剰余」という名前がついていて、先ほど示した例でいうと、どんな整数も2乗したときに3で割って余り2にはならないことが分かったので、これを
2は3の平方剰余ではない
のように表現します。

なるほど…分かったような…
さらにここで重要なのは、

$a$ が3の倍数のときは2乗しても3の倍数

$a$ が3の倍数でないときは2乗すると3で割って余り1

となることです。

……!?

(1)の解答

とりあえず $a^{2}+b^{2}=c^{2}$ の話に進みましょう。

$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは0か1になるのは分かりますね?

はい。「準備」でやったことですね。
示すべきことは何でしたか?
$a,b,c$ の少なくとも1つが3の倍数であることです。
逆に、どうであったらダメですか?
逆に…どの数も3の倍数ではないのがダメですね。
では、そうはならないことを証明しましょう。

「どの数も3の倍数ではない」とすると、おかしなことになるのです。

…背理法!

$a,b,c$ がすべても3の倍数ではないと仮定する。

このとき、$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは1である。

さっき重要だと言っていたこと…!

$a$ が3の倍数のときは2乗しても3の倍数

$a$ が3の倍数でないときは2乗すると3で割ると余り1

ですね!

$a^{2}+b^{2}$ は3で割った余りが1+1=2であり、

$c^{2}$ は3で割った余りが1である。

$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ が成立せず、矛盾。

よって $a,b,c$ の少なくとも1つは3の倍数である。(証明終わり)

分かってみれば単純…!

少なくとも1つが5の倍数

なお、同じ方法により、

$a,b,c$ のうち少なくとも1つは5の倍数

も分かりますよ。

よい練習になると思いますので、やってみてください。

(えっ…!)
略証明

$n\equiv\pm1$ (mod5)なら$n^2\equiv1$ (mod5),

$n\equiv\pm2$ (mod5)なら$n^2\equiv4$ (mod5)

より、一般に整数 $n$ が5の倍数でないとき、$n^{2}$ を5で割った余りは1か4になる。

$a,b,c$ がすべて5の倍数でないと仮定すると、

$a^{2}$,$b^{2}$ を5で割った余りの組み合わせが

$(1,1),(1,4),(4,4)$

のいずれの場合でも $c^{2}$ を5で割った余りの1または4と等しくならず、

$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ を成立させない。

よって $a,b,c$ のうち少なくとも1つは5の倍数である。

(2)の解答

問題の続きをもう一度見てみましょう。

(2) $a^{2}+b^{2}=225$ をみたす自然数 $a,b$ の値をすべて求めよ。

225は平方数ですか?
あ、$15^{2}$ ですね!
$15^{2}$ は3の倍数ですか?
3の倍数ですね。
つまり  $a^{2}+b^{2}=c^{2}$ において、右辺が3の倍数なのですね。

これと(1)から、分かることはありませんか?

えっと…

(1)で分かったことは「$a,b,c$ のうち少なくとも1つが3の倍数」なので、$c$ が3の倍数と分かっても残りの2つがどうであるかは…

(1)の結果そのものというより、解答をもう一度思い出してください。

平方剰余に注目しましたよね。

…3の平方剰余は0か1で、左辺と右辺を3で割った余りが等しくなるように…
…あ!

右辺の余りが0になるから、左辺の余りを0にするには、$a$ も $b$ も3の倍数にするしかない!

その通り。つまり…

$a^{2}+b^{2}=225$ は自然数 $a’,b’$ を使って

$a=3a’$,$b=3b’$

とおいて、

$9a’^{2}+9b’^{2}=225$

$a’^{2}+b’^{2}=25$

と書き換えられる。

これをみたす $a’,b’$ の組は、$(a’,b’)=(3,4),(4,3)$ しかありません。

よって…

$(a,b)=(9,12),(12,9)$(解答おわり)

最後に答案にまとめておきます。

答案

(1)

自然数 $a$ について

(ⅰ) $a\equiv0$ (mod3) のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv0$ (mod3)

(ⅱ) $a\equiv1$ (mod3)のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv1$ (mod3)

(ⅲ) $a\equiv2$ (mod3)のとき

$\hspace{2em}a^{2}\equiv4\equiv1$ (mod3)

よって

$a$ が3の倍数のとき $a^{2}$ を3で割った余りは0

$a$ が3の倍数でないとき $a^{2}$ を3で割った余りは1である。

ここで $a,b,c$ がすべても3の倍数ではないと仮定する。

このとき、$a^{2}$ も $b^{2}$ も $c^{2}$ も、3で割った余りは1である。

$a^{2}+b^{2}$ は3で割った余りは2であり、

$c^{2}$ は3で割った余りが1である。

$a^{2}+b^{2}=c^{2}$ が成立せず、矛盾。

よって $a,b,c$ の少なくとも1つは3の倍数である。(証明終わり)

(2)

$a^{2}+b^{2}=225$

右辺が3の倍数より左辺も3の倍数になるが、(1)と同様に考えて、$a^{2},b^{2}$ ともに3の倍数にならないといけない。

自然数 $a’,b’$ を用いて

$a=3a’,b=3b’$

とおいて、

$9a’^{2}+9b’^{2}=225$

$a’^{2}+b’^{2}=25$

となるから、$(a’,b’)=(3,4),(4,3)$

よって、$(a,b)=(9,12),(12,9)$

(解答おわり)

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。