数学2

高次方程式の有理数解

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高次方程式の有理数解

3次方程式などを解くときに暗黙に成立するとしていた、次の定理について考えてみましょう。

有理解の定理

$n$ 次方程式

$a_{0}x^{n}+a_{1}x^{n-1}+a_{2}x^{n-2}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}=0$

($a_{0},a_{1},…,a_{n}$ は整数)

が有理数の解をもつとき、その有理数解は $\frac{a_{n}の約数}{a_{0}の約数}$ とかける。

普段つかっている定理ですよね?

3次方程式を解くときに因数定理を使って…

あ…代入して $0$ になるものを探すやつですね!
代入する候補は、約数から絞ることができるという定理です。

たとえば「$2x^{3}+x^{2}+5x-3=0$ を解け」と言われたら…

$\pm1,\pm3,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{3}{2}$ を順に代入して調べますね!
今回はこの定理を証明してみましょう。

証明

$a_{0}x^{n}+a_{1}x^{n-1}+a_{2}x^{n-2}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}=0$

有理数の解は $\dfrac{p}{q}$($p,q$ は互いに素な整数)と表せて、

$a_{0}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n}+a_{1}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n-1}+a_{2}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n-2}+\cdots+a_{n-1}\dfrac{p}{q}+a_{n}=0$

が成り立ちます。

この両辺に $q^n$ をかけて、整数の等式にしましょう。

$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}=0$

あとは式をよく観察すれば、定理を証明できますよ。

分母についての証明

うー…ん…長くて見にくい…
大雑把に観察しましょう。
左辺のうち…

$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}$

$a_{0}p^{n}$ 以外の項は $q$ の倍数ですね。
うしろの項は全部 $q$ の倍数ですね。
ですから、等式は、

$a_{0}p^{n}+$$a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}$$=0$

$\hspace{4em}$↑ $q$ の倍数

$a_{0}p^{n}+(q$の倍数$)=0$

となります。よって、$a_{0}p^{n}$ も $q$ の倍数ですね。
足して $0$ だから、当然 $a_{0}p^{n}$ も $q$ の倍数ということですね…
$a_{0}p^{n}$ が $q$ の倍数ですが、$p$ と $q$ は互いに素なので、$a_0$ が $q$ の倍数と分かります。
…?
$p$ と $q$ は共通の素因数をもたないですから、$q$ の因数はすべて $a_0$ の方に含まれていることになります。
なるほど!
これで $a_0$ は $q$ の倍数、すなわち「$q$ は $a_0$ の約数」が言えました。
有理数の解を $\dfrac{p}{q}$ とかいたから…
$\frac{a_{n}の約数}{a_{0}の約数}$ の分母が正しいと言えましたね!

分子についての証明

次は分子ですが…

これも同じような変形で解決しますよ。

同じような?
さっきは、$a_{0}p^{n}$ 以外をくくりました。

今度は $a_{n}q^{n}$ 以外をくくると…

あ!こういうことですね!

$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}$$+a_{n}q^{n}=0$

$\hspace{1em}$↑ $p$ の倍数

($p$ の倍数)$+a_{n}q^{n}=0$

だから、$a_{n}q^{n}$ は $p$ の倍数です!
さて、$p$ と $q$ は互いに素なので…
えっと、この場合は…

$p$ の因数は全て $a_n$ が持っていないといけない…

$a_n$ は $p$ の倍数です!

つまり、$p$ は $a_n$ の約数、と。

以上より、有理数解 $\dfrac{p}{q}$ は $\frac{a_{n}の約数}{a_{0}の約数}$ とかける。

これが示すべきことでした。証明終わりです。

問題

実際の入試問題を解いてみましょう。
問題

(1) $a,b,c$ を整数とする。

3次方程式 $x^{3}+ax^{2}+bx+c=0$ が有理数の解を持つならば、その解は整数であることを示せ。

(2) 方程式 $x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解を持たないことを背理法で示せ。

(神戸大・一部省略)

解答

(1)

$x^{3}+ax^{2}+bx+c=0$ の有理数解を $\dfrac{p}{q}$ とする。($p$ と $q$ は互いに素な整数)

$\left(\dfrac{p}{q}\right)^{3}+a\left(\dfrac{p}{q}\right)^{2}+b\dfrac{p}{q}+c=0$

が成り立つから、

$p^{3}+ap^{2}q+bpq^{2}+cq^{3}=0$

$p^{3}+q\left(ap^{2}+bpq+cq^{2}\right)=0$

$ap^{2}+bpq+cq^{2}$ は整数より、$p^{3}$ は $q$ の倍数。

ここで $p$ と $q$ は互いに素な整数であるから、$p^{3}$ と $q$ も互いに素。よって $q=\pm1$ でなければならない。

あれ、さっきと何か違うような…

さっきは「$a_{0}p^{n}$ が $q$ の倍数で、$p$ と $q$ は互いに素なので、$a_0$ が $q$ の倍数」

でしたよね。この場合は…

$p^{3}$ は $q$ の倍数ですが、$p^{3}$ と $q$ は共通の素因数をもってはいけないので、$q=\pm1$ でしかありえません。
たしかに。。。しかし何かさっきと違うのは気持ち悪いです…
さっきと同じ表現をするなら、$a_0$ が $1$ ですから「$1$ が $q$ の倍数」つまり「$q$ は $1$ の約数」ですかね。
あ、それなら分かります!
でもなるほど、たしかに表現がちょっと変になりますね…

「$p^{3}$ と $q$ が互いに素より $q=\pm1$」がよさそうです!

$q=\pm1$ より、有理数解 $\dfrac{p}{q}$ は整数である。(証明おわり)

(2)

$x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解 $\alpha$ を持つと仮定する。

背理法…「証明したいことの否定を仮定する」…

よって

$\alpha^{3}+2\alpha^{2}+2=0$

$\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ が成り立つ。

定数項以外を括ったのはさっきと同じですね!

このとき、(1)より $\alpha$ は整数であるので、$\alpha^{2}$ も $\alpha+2$ も整数。

よって $\alpha^{2}$ は $2$ の約数。

$\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ を見たらすぐに分かりますね!

$2$ は $\alpha^{2}$ の倍数…と見ても同じですね。

$\alpha$ は整数より $\alpha^{2}=1$

$\alpha=\sqrt{2}$ じゃおかしいですからね!

つまり $\alpha=\pm1$。

しかしこのいずれも $\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ をみたさず、矛盾。

よって $x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解をもたない。(証明終わり)

まとめ

実際の問題だとなんか微妙に違う…
ですね。ある程度は臨機応変にできるよう慣れが必要ですね。

でも、大まかな流れとしては同じですか?

大まかには同じですね!

定数項以外をくくるか、最高次の項以外をくくるか

この手の問題はある程度は覚えておかないと、その大まかな流れすら分からなくなります。

難易度の高い問題ではありますが、ときどき思い出してみてください。

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。