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高次方程式の有理数解
3次方程式などを解くときに暗黙に成立するとしていた、次の定理について考えてみましょう。
$n$ 次方程式
$a_{0}x^{n}+a_{1}x^{n-1}+a_{2}x^{n-2}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}=0$
($a_{0},a_{1},…,a_{n}$ は整数)
が有理数の解をもつとき、その有理数解は $\frac{a_{n}の約数}{a_{0}の約数}$ とかける。
3次方程式を解くときに因数定理を使って…
たとえば「$2x^{3}+x^{2}+5x-3=0$ を解け」と言われたら…
証明
$a_{0}x^{n}+a_{1}x^{n-1}+a_{2}x^{n-2}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}=0$
有理数の解は $\dfrac{p}{q}$($p,q$ は互いに素な整数)と表せて、
$a_{0}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n}+a_{1}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n-1}+a_{2}\left(\dfrac{p}{q}\right)^{n-2}+\cdots+a_{n-1}\dfrac{p}{q}+a_{n}=0$
が成り立ちます。
この両辺に $q^n$ をかけて、整数の等式にしましょう。
$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}=0$
分母についての証明
$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}$
$a_{0}p^{n}+$$a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}+a_{n}q^{n}$$=0$
$\hspace{4em}$↑ $q$ の倍数
$a_{0}p^{n}+(q$の倍数$)=0$
分子についての証明
これも同じような変形で解決しますよ。
今度は $a_{n}q^{n}$ 以外をくくると…
$a_{0}p^{n}+a_{1}p^{n-1}q+a_{2}p^{n-2}q^{2}+\cdots+a_{n-1}pq^{n-1}$$+a_{n}q^{n}=0$
$\hspace{1em}$↑ $p$ の倍数
($p$ の倍数)$+a_{n}q^{n}=0$
$p$ の因数は全て $a_n$ が持っていないといけない…
つまり、$p$ は $a_n$ の約数、と。
以上より、有理数解 $\dfrac{p}{q}$ は $\frac{a_{n}の約数}{a_{0}の約数}$ とかける。
問題
(1) $a,b,c$ を整数とする。
3次方程式 $x^{3}+ax^{2}+bx+c=0$ が有理数の解を持つならば、その解は整数であることを示せ。
(2) 方程式 $x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解を持たないことを背理法で示せ。
(神戸大・一部省略)
解答
(1)
$x^{3}+ax^{2}+bx+c=0$ の有理数解を $\dfrac{p}{q}$ とする。($p$ と $q$ は互いに素な整数)
$\left(\dfrac{p}{q}\right)^{3}+a\left(\dfrac{p}{q}\right)^{2}+b\dfrac{p}{q}+c=0$
が成り立つから、
$p^{3}+ap^{2}q+bpq^{2}+cq^{3}=0$
$p^{3}+q\left(ap^{2}+bpq+cq^{2}\right)=0$
$ap^{2}+bpq+cq^{2}$ は整数より、$p^{3}$ は $q$ の倍数。
ここで $p$ と $q$ は互いに素な整数であるから、$p^{3}$ と $q$ も互いに素。よって $q=\pm1$ でなければならない。
さっきは「$a_{0}p^{n}$ が $q$ の倍数で、$p$ と $q$ は互いに素なので、$a_0$ が $q$ の倍数」
でしたよね。この場合は…
「$p^{3}$ と $q$ が互いに素より $q=\pm1$」がよさそうです!
$q=\pm1$ より、有理数解 $\dfrac{p}{q}$ は整数である。(証明おわり)
(2)
$x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解 $\alpha$ を持つと仮定する。
よって
$\alpha^{3}+2\alpha^{2}+2=0$
$\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ が成り立つ。
このとき、(1)より $\alpha$ は整数であるので、$\alpha^{2}$ も $\alpha+2$ も整数。
よって $\alpha^{2}$ は $2$ の約数。
$\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ を見たらすぐに分かりますね!
$2$ は $\alpha^{2}$ の倍数…と見ても同じですね。
$\alpha$ は整数より $\alpha^{2}=1$
つまり $\alpha=\pm1$。
しかしこのいずれも $\alpha^{2}(\alpha+2)=-2$ をみたさず、矛盾。
よって $x^{3}+2x^{2}+2=0$ は有理数の解をもたない。(証明終わり)
まとめ
でも、大まかな流れとしては同じですか?
定数項以外をくくるか、最高次の項以外をくくるか…
難易度の高い問題ではありますが、ときどき思い出してみてください。