三角関数

$\cos\dfrac{\pi}{5}$の値を求める

手順をすべて覚えておくべき有名問題を紹介します。

※スマホの場合、横向きを推奨

問題

次の問いに答えよ。

$x=\dfrac{\pi}{5}$ のとき、$\sin3x=\sin2x$ が成り立つことを示し、$\cos\dfrac{\pi}{5}$ の値を求めよ。

準有名角

45°、60°などは三角比の値をすぐに答えられる有名角です。

75°などはそれらを組み合わせて加法定理を使えば三角比の値が求まる「準有名角」です。

この問題で扱う $\dfrac{\pi}{5}$ (72°)もまた、ちょっとした工夫で三角比の値が求まる準有名角です。

解き方の手順も含めて「有名」なので、しっかりと覚えてください。

等式成立の証明

まずは $\sin3x=\sin2x$ が成立することを示しましょう。

慣れていない人は、ここでいきなり2倍角・3倍角の公式を使ってしまいがちですが、「中身を比べる」という方法も強力であることを忘れてはいけません。

(2倍角・3倍角の公式を使ってしまいがち→)ギクッ…!
$2x$ と $3x$ の関係式を作ります。

$5x=\pi$ なので、$3x=\pi-2x$

公式 $\sin(\pi-x)=\sin x$ をつかって

$\sin3x=\sin(\pi-2x)=\sin2x$

となり、示されました。

…式の上では確かにそうですが、なんだかイメージがしにくいです…
この式には、下の図のような意味がありますよ。
$3x=\pi-2x$ なので、$3x$ と $2x$ は高さが等しいです。

左右対称になっていることを公式を使って書いているわけです。

あっさりと書いてしまいましたが、第一の難所ですね。

2次方程式への変換

続いて、$\sin3x=\sin2x$ を2次方程式に変換します。

えっ、2次方程式へ変換ですか?

3倍角の公式を使うので、3乗が出てくると思うんですが…

もっともな質問ですが、とりあえずやってみましょう。

ちゃんと2次方程式になりますよ。

2倍角・3倍角の公式より、

$\sin3x=\sin2x$ を変形すると

$3\sin x-4\sin^{3}x=2\sin x\cos x$

これをどう変形していったらいいんでしょう?

もう一度問題を見てみましょう。

与えられた式は$\sin$ なのに、求めるのは$\cos$ なんですよ。

変だと思いませんか?

たしかに…
つまり、$\sin$ の2倍角、3倍角の式を $\cos$ の式に直すの必要があるのです。

$\sin x≠0$より、両辺を $\sin x$ で割ると

$3-4\sin^{2}x=2\cos x$

$\sin x≠0$ …?
$\sin \dfrac{\pi}{5}$ は0ではないですから。割って大丈夫、ということです。

計算を続けると、

$3-4(1-\cos^{2}x)=2\cos x$

$4\cos^{2}x-2\cos x-1=0$

$\cos$ だけの2次方程式になりましたね!

$\cos\dfrac{\pi}{5}$ の値を求める

2次方程式を解いて、

$\cos x=\dfrac{1\pm\sqrt{5}}{4}$

$x=\dfrac{\pi}{5}$ より $\cos x>0$ なので、

$\cos \dfrac{\pi}{5}=\dfrac{1+\sqrt{5}}{4}$ …解答終わり

上手く $\cos$ の式になったからいいですけど、こんなに上手く行くものですか?

これは偶然ではなく必然なんです。$\cos$ のみの式になることは初めから分かっていたのです。

その理由は長くなるので、別の機会にお話ししましょう。(→「チェビシェフ多項式」)

ABOUT ME
e-yobi
北海道大学工学研究科 修士課程修了。 専門は複雑系における物理現象。 大学卒業後は商社でネットワークエンジニアとして働いていました。 4年で退職し、教員免許を取得。 公立高校・私立高校の教員を経て、現在は関西で予備校講師をしています。