答案を書くにあたって、等式を論理的に読みやすく書くことが必要になります。そのための基本的な考えを説明しましょう。
等式を書く
まず次のような問題をみてください。
$2(3x-2)-4x=3$
$2(3x-2)-4x$
$=6x-4-4x$
$=2x-4=3$
$2x=7$
$x=\dfrac{7}{2}$
えっ…。何か間違っていますか?
実際、私こういう風に書くかも…
間違っているというのは言い過ぎですね。
ちょっと無神経な感じがするだけです。
気づいていないのは本人だけというか…
例えるなら、「にわかに好きになったアーティストのライブで変な応援の仕方をしているファンが周りからジロジロみられているのに気が付いていない」みたいな感じです。
方程式と恒等式
いったんこの問題からは離れて、方程式と恒等式についてお話ししましょう。
・方程式
等式を成立させるような変数の値を求めることを「方程式を解く」という。
このとき、対象となる等式を方程式という。
・恒等式
変数にどんな値を入れても常に成立する等式を恒等式という。
・$2x=4$
・$\sin x=1$
一方、こんなの↓は恒等式です。
・$(x+y)^{2}=x^{2}+2xy+y^{2}$
・$\sin x=\cos\left(\dfrac{\pi}{2}-x\right)$
・$2(x+1)=2x+2$
方程式と恒等式の区別(?)
常に成立する方程式を作ることも可能です。
例えば、
$2(x+1)=2x+2$ を解け。
とすれば、$x$ の値に係わらず成立する方程式になります。
「解がすべての実数である方程式」です。
パッと見は恒等式だと思いますね。でも、これを方程式にしてしまうのも自由です。
方程式か恒等式かは形によって決まるのではありません。「何がしたいか」によって決まります。
$2(x+1)=2x+2$ を成立させる $x$ を見つけろと言われれば、これは方程式です。
意味の異なる2つのイコール
言い換えれば、これは記号「=」の使われ方の差であると言えます。
方程式は「右辺と左辺を同じにせよ」という変数に対する条件を言い、
恒等式は「右辺と左辺は同じである」という成立する命題を言っているのです。
記号の上では同じ「=」ですから、どちらの意味を持つかは文の中での使われ方次第ということになります。
冒頭の方程式、再考
さっきの方程式をもう一度見てみましょう。
$2(3x-2)-4x$
$=6x-4-4x$
$=2x-4=3$
$2x=7$
$x=\dfrac{7}{2}$
こんな感じでしたね。いくつも「=」が使われていますが、役割が2種類あることに気が付きますか?
「同じにせよ」と「同じである」の2種類です。色分けしてみましょう。
$2(3x-2)-4x$
=$6x-4-4x$
=$2x-4$=$3$
$2x$=$7$
$x$=$\dfrac{7}{2}$
「=」に注意した書き方
例1 すべて方程式にする
$\begin{align*}2(3x-2)-4x= & 3\\6x-4-4x= & 3\\2x-4= & 3\\2x= & 7\\x= & \dfrac{7}{2}\end{align*}$
「=」の役割を統一させました。この場合、「=」の位置を縦にそろえるのが「作法」です。
例2 はじめは恒等式、あとから方程式
$2(3x-2)-4x$
$=6x-4-4x$
$=2x-4$
よって
$\begin{align*}2x-4= & 3\\2x= & 7\\x= & \dfrac{7}{2}\end{align*}$
この場合も、方程式の「=」の位置は縦にそろえるのがよいでしょう。
恒等式の方の「=」は無理にそろえる必要はありませんが、適切に改行するのが普通です。
慣習的な用法
何が何でもこの使い分けをしないといけないわけでもありません。
次の2つの問題と解答を見てみましょう。
例1
解答
$x^{2}-mx-m=0$ の判別式を $D$ とすると、重解を持つ条件は $D=0$ である。
$D=m^{2}-4(-m)$
$=m^{2}+4m$
$=m(m+4)=0$
であるから $m=-4,0$
例2
解答
$y’=3x^{2}-3$
$=3(x+1)(x-1)=0$
となるのは、$x=\pm1$ のとき。
(以下略)
例1 正しい(几帳面な)書き方
$D=m^{2}-4(-m)$
$=m^{2}+4m$
$=m(m+4)$
よって
$m(m+4)=0$
例2 正しい(几帳面な)書き方
$y’=3x^{2}-3$
$=3(x+1)(x-1)$
よって $y’=0$ となるのは、$x=\pm1$ のとき。
(以下略)
神経質な人は気にするでしょうけど、几帳面でないほうも市民権を得ていると思います。実際、私もよく書きますし。
ただ、「=」の意味が違うことは理解した上で書いてください。
わけもわからず書いているのと、わかって書いているのでは後々の学力の伸びに違いが出てくると思ってくださいね。